外出先から介護中の高齢者の様子やペットの姿を簡単にチェックできるとして、インターネット経由で遠隔監視が可能な「ネットワークカメラ」の人気が高まっています。手ごろな価格で利便性が高い一方、ネットにつながっているためサイバー攻撃の対象になりやすいことはあまり知られていません。注意点を紹介します。
●自宅、スマホで確認
約15種のネットワークカメラが並ぶ東京・秋葉原にあるヨドバシカメラの店舗。価格帯は7000円〜2万円台で、マイク、スピーカーを搭載し双方向で会話ができるタイプや撮影範囲の広いものが人気だそうです。売り場のグループリーダーを務める辻本俊輔さんは「ネット環境があれば簡単に設置できますし、外出先からスマートフォンで室内の様子を気軽にチェックできます。中高年の方が多く購入されていますね」と話します。
一方、情報セキュリティー大手「トレンドマイクロ」(東京都渋谷区)によると、使用頻度が高くウイルス対策が浸透しているパソコン類と違い、ネットワークカメラは利用者が設置した際に入力したメーカー出荷時の初期設定パスワードのままで放置しているケースが多く、サイバー攻撃の標的になりやすいそうです。
●サイバー攻撃標的
国内でも、既にインターネットにつながった監視カメラの機能がいたずら目的で乗っ取られる事件が発生しています。昨年4月には神戸市東灘区の障害者就労支援施設の防犯カメラと、千葉県八千代市の水位監視カメラが不正にアクセスされ、画面に「I’m Hacked.bye2(ハッキングされた。バイバイ)」と書き込まれたり、パスワードが変更されたりして施設や市が操作できないようになりました。カメラはパスワードが初期設定のままで、セキュリティーが甘い状態だったそうです。
「我が家のカメラを攻撃して何の意味があるのだろう」と警戒していないかもしれませんが、被害はのぞき見やいたずらにとどまりません。トレンドマイクロ・セキュリティエバンジェリストの岡本勝之さんは「いたずら目的もありますが、ほとんどの攻撃者は特定の家庭を狙っているわけではありません。常にセキュリティー機能が弱い機器を探し、カメラを入り口に、家庭のネットワークでつながっているパソコンなどから、より価値の高い情報を盗み出そうとしています」と指摘しています。
●初期設定は変更を
一般家庭では通常、インターネットに接続するルーター(複数の端末をネットにつなぐ通信機器)を設置し、カメラやテレビ、パソコン、スマートフォンなどを使用しています。ルーターやカメラが乗っ取られ、さらに同じネットワークでつながっているパソコンやスマートフォンに侵入されてしまえば、知らないうちにウイルス感染させられ、遠隔操作でクレジットカードの情報を抜き取られたり、企業や自治体に対するサイバー攻撃の踏み台にされてしまったりすることがあるのです。
岡本さんは「カメラへのサイバー攻撃が判明したこと自体が最近のため、少し前に発売されているカメラはセキュリティー機能に問題がある場合が多いです。最低限、ルーターとカメラの初期パスワードは変更しておくべきです」と指摘しています。
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