夏休みを迎え、子どもの生活リズムの乱れを心配する保護者は少なくないようです。1日を気持ちよく過ごせるよう、しっかり眠って、スッキリ目覚めさせるにはどうしたらいいでしょうか。
●起きる時間一定に
花火大会や祭りなど、夏休みは夜のイベントが多く、子どもたちの睡眠時間も短くなりがちです。ですが、睡眠について詳しい江戸川大睡眠研究所の福田一彦所長は「睡眠時間の短さは、眠りの深さや質では補えません。就寝時間が遅れても、起床時間はできるだけ守らせることが大切です。起床時間がずれると、就寝時間もずれやすくなります。寝過ごしてもせいぜい1時間以内にとどめてほしいですね」と指摘します。日本は、年齢を問わず睡眠時間が少ない国です。特に、子どもは1日1時間〜1時間半も睡眠が足りていないとされています。
日本と同様、アジアの国でも睡眠不足の傾向が指摘されています。人種の違いよりも、室内照明に蛍光灯が普及するなど、文化的な違いが影響している可能性があります。夜に光を浴びると、眠気に関係するホルモン「メラトニン」の分泌が抑えられます。夜は強い光を浴びるような環境を避けた方がよさそうです。
夏休みを活用して夜遅くまで勉強する受験生がいるかもしれません。しかし、福田所長は「効率が落ちて寝付きも悪くなり、昼夜逆転に近づいていくため、夜は早めに休む方がいいです」と助言しています。
暑い夜、ぐっすり眠るにはどうすればいいでしょうか。「エアコンを使うべきです」と福田所長は語ります。
眠りにつくには、深部体温(体の内部の温度)を下げる必要があります。タイマーによってエアコンの電源が途中で切れると、途端に深部体温が上昇します。何度も目が覚める「中途覚醒」が増えます。風が直接体に当たらないよう気をつけつつ、「弱くてもつけっぱなしが理想的」だそうです。
●光や音を活用
次の睡眠につなげるためにも、スッキリ目覚めることが重要です。最近では起きる時間に合わせて徐々に「光」を当てる目覚まし時計もあります。光には脳の活動を活発にする作用があり、睡眠が浅くなって自然に目が覚めやすくなるわけです。福田所長は「寝坊をしないためにも、朝になったら自然光が入るように工夫するのもいい」と語ります。
さらに、「音」の違いも覚醒を左右しそうです。滋賀大の大平雅子准教授(応用健康科学)らのチームが、小学校高学年の男女13人に眠ってもらい、自分の名前を呼ぶ母親の声、面識のない成人女性の声、アラーム音の3種類の音を聞かせ、主観的な目覚めの良さを調べてみました。さらに、鏡に映った手を見ながら正しく図形をなぞる課題に取り組み、起床後の注意力を比べました。
すると、起こしてから目覚めるまでの時間が短い方が目覚めが良いと感じる傾向がみられ、人の声で起こすとアラーム音より約10分の1と短かくなっていました。人の声で目覚めた場合は、起床後も注意力が高く、誤りが約2分の1に減少しました。ただ、母親と成人の女性の声の間に差はありませんでした。
自分にとって意味のある情報には、睡眠中でも無意識に注意力が働くという研究報告もあります。大平准教授は「目覚まし音を自分にとって意味のある音にすれば、より快適な目覚めを得られるかもしれません」と話しています。
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