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挑戦促すサバティカル休暇


「人生100年時代」を迎え、仕事を長年続けるには、労働意欲の維持やスキルアップが大切になりました。それを後押しする方策の一つに、長期勤続者が職務を一定期間離れて学び直しなどをする「サバティカル休暇」があります。欧州や大学などの研究機関で浸透している制度ですが、日本企業の導入例はまだ少ないようです。

毎日忙しい女性(イラスト)●目的限らず3カ月

サバティカル(sabbatical)は、旧約聖書に登場する「安息日」の意味のラテン語に由来し「長期休暇」「研修休暇」などと訳されています。1880年に米ハーバード大で始まった研究のための有給休暇が起源とされ、1990年代に離職対策として欧州企業で広まりました。目的を限定しない1カ月以上の長期休暇を指すのが一般的です。

国内IT大手のヤフーは2013年11月にサバティカル休暇制度を導入しました。昨年度末までに158人が取得しました。勤続10年以上の社員が在職中に1度、3カ月まで取得でき、休暇中は給与1カ月分の「支援金」がもらえます。

ネットショッピングの部署で働く入社15年目の女性(42)は昨年10月から3カ月間、制度を利用しました。平日は仕事と家事と2人の子育て、週末は少年野球の手伝いをしてきました。「走り続けてきたので、立ち止まる時間が欲しかった」というのが理由です。

週半分は専門学校へ(イラスト)●週半分専門学校へ

5年前に現部署に異動し、サイト運営の知識不足を感じました。そこで休暇中は、週の半分は専門学校に通って関連技術を学び、残りは家事をまとめてこなす日、外出する日と決めました。「子どもの話にじっくり耳を傾ける心の余裕もできました」と振り返ります。

人事担当者は「ビジネススキルだけでなく、家族との交流や趣味の充実を通した社員の人間的成長が、会社の価値向上にもつながります」と意義を説きます。ただ、休暇中は社有パソコンやスマートフォンの返却を求められます。この女性社員は上司と会ったり同僚とランチをしたりして、職場の情報を得ていたそうです。テレワークなど柔軟な働き方を進める同社ですが、成果が問われるのも確かです。

中小企業でも導入例があります。医療システムの開発などを手掛ける社員約270人のファインデックスは昨年5月に制度化し、今春に四国支社の30代男性エンジニアが第1号になりました。勤続10年ごとに最長で半年間取得でき、休暇中は基本給の3割が支給されています。同業以外の副業はOKで、男性は実家が営む店の経営立て直しに汗を流しました。

相原輝夫社長は「勤続10年あたりは今後のキャリアに悩む時期で『できなかったことに挑戦したい』と退職する例も多かった」と明かします。長期休暇による離職防止効果を期待していますが、同時に多数の社員が取得した場合の対策は「まだ考えていない」とのことです。

●まず有休消化から

日本でサバティカル休暇を広げるための課題は何でしょうか。日本総研の山田久主席研究員は、失業者を休暇取得者の代替要員に充てる制度があるスウェーデンなどの例を挙げ「休職や転職が当たり前で代替要員も見つけやすい欧米と比べ、日本企業には終身雇用の慣習が根強く残る」と指摘します。政府が導入企業に優遇措置などのインセンティブ(動機付け)を与えることを提案しています。

ただ、日本では、長期休暇以前に普段の有給休暇すら十分に取れていません。厚生労働省の調査によると2017年の取得率は51%にとどまり、旅行サイトのエクスペディアによる世界19カ国・地域の比較では2018年まで3年連続の最下位です。リクルートワークス研究所の村田弘美グローバルセンター長は「まず有休の確実な消化から始めるのが現実的」と話しています。


毎日新聞くらし医療部

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