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生ごみ減らし安否も確認


生ごみをコンポストに(イラスト)家庭の生ごみを堆肥に変える容器「コンポスト」。福岡市のNPO法人「循環生活研究所」は悪臭の少ない独自のコンポストを開発し、高齢者を中心とした各家庭での普及に取り組んでいます。見守りとごみ減量の一石二鳥を狙った試みとして、環境省は地域の環境問題と社会課題を同時解決するモデル事業の一つに選び、活動を後押ししています。

●地域で堆肥づくり

JR博多駅から電車で約20分。半世紀ほど前に開発された高台に、庭付きの一戸建てが並ぶ住宅街「美和台校区」(人口約1万5000人)が広がります。近年、若い世代は親元を離れ、高齢者人口は25%を上回ります。地区内の高低差は約40メートルあり坂道が多く、外出が遠のき、安否確認が必要な住宅が増えました。

取り組みを始めたきっかけは、団体を設立した平由以子理事(52)の父親が約30年前、肝臓病を発症したことです。食生活を改善しようと、母親と無農薬で新鮮な野菜を栽培することを思い立ちました。堆肥づくりに注目し、温度調整や一緒に混ぜる落ち葉の種類や量など試行錯誤を重ねながら、臭いや虫の発生が少ない方法を編み出しました。

その方法を冊子「堆肥づくりのススメ」にまとめ、講演を続けていると校区の住民が関心を示しました。そこで、平さんらは1997年、研究所を設立、理解を示した家庭にコンポストの設置を始めました。その過程で、堆肥づくりが難しい高齢者世帯が目立ち始めました。活動を通して、顔見知りは増え、「作業指導の延長で、安否確認もできないだろうか」との相談が寄せられました。そこで、昨年4月から毎週1回程度、コンポストを設置した約100世帯を巡回する「見守りコンポスト運動」を始めました。

コンポスト設置家庭を巡回(イラスト)●高齢者宅を巡回

「黒っぽい、いい色をしていますね。臭いもほとんど気にならない」

研究所のスタッフは、15リットルサイズのコンポストを設置した83歳女性に声をかけました。昨年10月から使い始めると、ごみを出す頻度は週2回の45リットル袋から、週1回の30リットル袋で済むようになりました。女性は「重いごみを運ぶのが負担でした。見守りの人は、井戸端会議のいい相手です」と笑顔を見せました。

得られた堆肥は、参加者の自宅のほか、手入れが行き届かなくなった5軒の庭で利用しています。ジャガイモやニンジンなど十数種類の野菜が栽培され、生産量の1割を5軒に渡し、残りを校区内のイベントや商店で販売しています。

研究所の試算では昨年度、コンポスト設置家庭で生ごみが計約4トン減り、その焼却分が減った効果で二酸化炭素排出量は1.4トン削減できました。今年度は130世帯の参加を目標に掲げています。この取り組みをモデル事業に選んだ環境省の九州地方環境事務所の担当者は「生ごみの有効活用が、循環型社会の実現だけでなく地域の安全・安心につながる点を評価した」と話しています。

●環境省が後押し

環境省は、環境問題と社会課題の同時解決を目指す団体の支援に乗り出しており、モデル事業には同研究所のほかに7団体を採択しました。多世代で森を手入れして得た間伐材を高齢者福祉施設のストーブに利用する「鶴岡市三瀬地区自治会」(山形県)など、高齢化に注目した取り組みが目立ちます。

環境政策に詳しい佐藤真久・東京都市大教授は「高齢化も環境対策も複数の因子が絡み、同時解決しようとする活動への期待は大きい。一方で、地域住民の信頼なしには普及していかない。実施主体の息の長い真摯な活動と多様な力を持ち寄る協働、それらを支える行政当局の部局間連携が欠かせない」と話しています。


毎日新聞くらし医療部

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