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家具でシックハウス症候群


屋内の空気中の化学物質が原因で頭痛やだるさなどの体調不良が起きる「シックハウス症候群」。家屋の建材だけでなく、家具など家庭用品が発生源となることもあります。新生活を始める前に、どのように家具を選べばいいのでしょう。

ベッド新調し頭痛(イラスト)●ベッド新調し頭痛

東京都内に住んでいた主婦(42)は2010年にベッドを新調後しばらくして喉の痛みや頭痛に悩まされました。当初は育児疲れが出たのかと思ったのですが、夫も体調が悪く、寝室を離れると良くなるため、保健所で13年、空気の簡易検査をしてもらいました。すると、ベッドだけホルムアルデヒドの反応があったのです。木材や接着剤に含まれることがあり、シックハウスの原因となる化学物質です。ベッドは大手メーカー製。百貨店で約40万円で買いました。「日本製」でホルムアルデヒドの放散が最も少ない等級を示す「F☆☆☆☆(エフ・フォースター)」の表示があり、安心だと選んだものでした。

相談を受けた百貨店が解体検査に出すと、国の室内濃度指針値(1立方メートル当たり100マイクログラム)を超える135マイクログラム相当のホルムアルデヒドが検出されました。メーカーも、買った直後は最大1.5〜2倍揮発していたとみられるとして謝罪しました。別の検査でも部品の合板(板を接着剤で張り合わせたもの)が放散量の多いF☆(エフ・ワンスター)に相当するとの結果が出ました。床材なら法律で使用を禁じられるレベルです。けれど、家具は作り付け以外規制がありません。

主婦はメーカーに賠償や自主回収を求めましたが結局調停に持ち込まれ、昨年不調に終わりました。主婦はにおいに敏感になり、近所の農薬散布や漂う柔軟剤のにおいに苦しんでいます。「表示を信じていたのに。ほかの購入者に注意を促して、対応を取ってほしかったです」と話します。

メーカーは取材に対し、「消費者庁に報告し、指導に従って対応しました」(担当者)と釈明しました。合板は海外の日本農林規格(JAS)認定工場から輸入して国内で組み立てており、ホルムアルデヒドを多く含む木材が混入した可能性を認めました。メーカーは輸入元の商社を訪ねたものの混入経緯は分からず「JAS認定制度を疑うか、全量を検査するしか防ぎようがありません」と訴え、現在は「自社でできる対策」としてホルムアルデヒド吸着シートを商品に梱包(こんぽう)して出荷しているそうです。

東京都健康安全研究センターの斎藤育江・副参事研究員は「シックハウスの相談は今もってあります」と話します。家具が原因であることは珍しくなく、「ホルムアルデヒドは住宅からはなくなりましたが、家具は出るものがあります」。加工用木材やカラーボックス、電気ストーブのガードの塗装からも高濃度の検出例があります。

くさいと感じたら風にさらしましょう(イラスト)●規制緩く解決難航

シックハウス問題に詳しい中下裕子弁護士によると、家具など家庭用品によるシックハウスは家屋より法的規制が緩く、解決が難しいです。最近は家具を扱う検査機関も限られ、売り手の協力なしには原因の特定にも苦労します。

現在国内産の木材はほぼF☆☆☆☆といわれます。一方、合板には海外製も多いです。日本より基準の緩い国向けの製品も作る工場があり「不安なところはあります」(家具メーカー)との声も聞かれます。

家具を製造・販売するカリモク家具(本社・愛知県)は、使用する木材がF☆☆☆☆に相当するか定期的に抜き取り検査しています。フランスベッド(東京都)は多くが国内の自社工場製ですが、海外生産分については現地工場を訪れて確認しているそうです。

消費者が自分で身を守るにはどうしたらよいのでしょう。「くさいと感じたら、においが収まってから使いましょう」と斎藤さんは勧めます。新品の方が一般的に化学物質の揮発量が多いからです。ベッドはマットを立て、タンスは引き出しを開け、ベランダに出せるものは出し、風にさらしましょう。においに敏感な人は展示品や金属製のものを買うとよいです。ベッドはマットレスのウレタン臭が気になる人がいますが、ウレタンを使わない商品もあります。斎藤さんは「においに耐えられないと思ったら、体が有害だと教えているのです。我慢せず自衛してください」と話しています。


◇家庭用品によるシックハウスの裁判例
2006年
電気ストーブのガードの塗装から発生したホルムアルデヒドで化学物質過敏症になったとして、販売したイトーヨーカ堂に東京高裁が賠償命令

08年
購入した加工用木材で作った机から揮発した化学物質で過敏症になったとする男性にホームセンターら販売側が計200万円を支払うことで、大阪高裁で和解が成立

18年
カラーボックスから揮発したホルムアルデヒドで化学物質過敏症になったとして、販売したホームセンター・コメリに高松地裁が賠償命令


毎日新聞生活報道部

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※掲載されている情報は2019年4月時点での情報であり、最新の情報と異なる場合があります。