お役立ち情報/情報ものしり帖


SNSの情報は偏りがち


自分と同じ意見の人と接するのは心地よいですね。ソーシャル・ネットワーキング・サービス(SNS)は現実世界より「同好の士」で集まりやすく反論を書く人を締め出すこともできます。異なる意見が見えなくなりがちなので「みんながそう言っている」かのような錯覚に陥らないよう注意しましょう。

フィルターバブル(イラスト)●業者が情報を選別

「フェイスブックを使っていると、自分の意見が正しくて『大勢が賛同している』と勘違いしている人がいると感じます」。IT企業に勤務しインターネットトラブルの啓発活動などに取り組む宮崎豊久さんはそう話しています。

SNSは、知人や友人、自分が読みたいと思う投稿をする人を「友達」として登録したり、フォローしたりして利用します。自分と同じ意見の人や好ましい言葉に自然と囲まれていく仕組み自体が、勘違いが起きる要因の一つです。

利用者の居心地が良いことは、ネット事業者にも利点となります。そのため、SNSに限らず、検索エンジン、ニュースや動画、音楽配信でも、事業者は利用者が好む情報を提供しようとしてきました。それが高じて注目されるようになったのが、好みの情報だけに囲まれて情報が偏る弊害です。

●フィルターバブル

嫌な情報を遮ってくれる「泡」に包まれるという意味で「フィルターバブル」という造語で呼ばれます。「友達」に囲まれたSNSで自分の意見を表明すると、同じ意見が「こだま」のように行き来し、「みんな」が言っているように感じる「エコーチェンバー(反響室)」現象も知られています。

こうした現象が問題視されるのはネット上で非科学的な言説を広めたり、差別を助長したりするケースです。現実社会ではごく少数の意見でもネット上では複数見つけることが可能で、同じ人が何度も投稿して大勢に見えることもあります。黙っている人、違う意見の人がもっといるかもしれないと意識していた方がいいでしょう。

自分の周りにいるのが同じ意見の人ばかりだと、それが正しいと思ってしまいがちなのは実社会でも同じです。SNSが違うのは「『友達』を簡単に変更できることだ」と鳥海不二夫・東京大大学院准教授(計算社会科学)は指摘しています。フォローを解除すれば気に入らない意見は目に入らなくなります。

多角的に考えよう(イラスト)●正しさ求め悪循環

ネット上には膨大な情報がありますが、一人一人はそれほど多彩な情報に触れているわけではありません。鳥海准教授は2017年の衆院選の後、政党の公式ツイッターの投稿を検証する研究をしました。6政党の投稿に接触した可能性がある約1600万人のタイムラインを調べた結果、1政党の投稿しか表示されていなかった人が800万人で最多でした。

ただ、目にする情報が偏っていると自覚するのは難しいところがあります。情報が多すぎて取捨選択しなければならないため、自分が正しいと思う情報を得ると、そればかり選んで集め、さらに正しいと思い込むという悪循環が働くからです。鳥海准教授は「心の中で楽しむ分には偏っても構わないが行動に移すなら多角的に見る必要があります。なるほどと納得した時こそ注意してほしい」とアドバイスしています。

利用者ごとに最適なニュースを選別し、配信する事業を手掛けるグノシー(東京都港区)は、サービスを開発した2011年ごろ、利用者の興味をSNSの投稿内容から割り出していました。共同創業者で研究開発を担当する関喜史さんによると、この方法では関心のある分野のニュースばかりに偏って配信されたため、社会的な関心事を混在させるように改善してきました。配信するニュースを多様化させると、利用者の興味の幅も広がる傾向が分かったそうです。

関さんはフィルターバブルやエコーチェンバーについて「限られた集団内でのみ支持され、これまでは表に出てこなかったような意見がSNSで顕在化した」と捉えています。その上で「公開の場で表明されれば社会の問題として扱うことができます。可視化されたことを肯定的に考え、問題があればSNSで反論していくことが大事ではないでしょうか」と指摘しています。


毎日新聞くらし医療部

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