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育児寄り添い 母の友800号


66年前に創刊された育児や童話をテーマにした月刊誌「母の友」(福音館書店)が、2020年1月号で、通巻800号を迎えました。母親をメインターゲットに据えつつ、父親や祖父母にも読者層は広がっています。戦後日本の子育てに寄り添い続けてきた雑誌の歩みを振り返りました。

66年前に創刊(イラスト)●数々の人気作誕生

創刊は1953(昭和28)年9月。忙しい母親に子育てのヒントや絵本の楽しさを届けようとスタートしました。創刊したのは松居直さん(現・同社相談役)です。子ども向けの本がまだ少なかった時代に、短いお話を毎月30編掲載され、1日1話読み聞かせできるよう工夫されていました。

その後、児童文学作家が作品を寄せるようになり、長編童話の連載も始まります。「ぐりとぐら」「おしゃべりなたまごやき」「魔女の宅急便」など今なお愛される物語の数々も、この雑誌から誕生しました。

現在の編集長は13代目の伊藤康さん(42)です。「誌名は『母の友』だが、初期から父親を意識した内容の企画はあった」と教えてくれました。

55年1月号には既に、父親の育児への心得を説いた特集記事が掲載されています。「新しい感覚で作られた戦後生まれの雑誌で、当時はインパクトがあったと思います」。戦争中は「死」が当たり前だった男性に、今度は「生」に向き合ってもらうのです。未来ある子どもたちが元気に笑って暮らせるように――。そんな「生きる」を考え抜くことが、創刊以来のテーマです。

●時代を映した特集

子どもが育つ社会にも目を向けたいとの思いから、時代を映した特集も多く組まれてきました。選挙や環境、消費者問題、原発事故などテーマは幅広く、最近では「LGBT じぶんの性をいきる!」(17年2月号)、「スマホとどうつきあう?」(19年3月号)、「愛着・アタッチメントってなに?」(同5月号)などが目を引きます。

また、多くの有名画家や絵本作家、イラストレーターが表紙を手がけてきたのも特徴です。これまで和田誠さんや安野光雅さん、林明子さん、酒井駒子さんらの作品が登場しました。13年4月号からは2人組の人気イラストレーター「100%ORANGE」が担当しています。

800号記念の特集は「子どもと私たちの未来のために『母』を考える」。伊藤編集長は「子育てを巡る状況、男性や女性、親子のあり方、働き方などが大きく変化していく中で『母』という言葉のイメージも変わりつつあります。正解は一つではありません。より自由に、より自分らしい生き方を見つけてほしいですね」と話します。創刊号から読んでいたという児童文学作家の中川李枝子さん▽東京大名誉教授の上野千鶴子さん▽サイボウズ社長の青野慶久さん▽詩人のくどうなおこさん――ら、各方面で活躍する20人がエッセーや漫画などを寄せました。

寄稿した一人、作家の小林エリカさん(41)は1児の母。精神科医だった父の小林司さん(故人)もかつて「母の友」に執筆していました。「子育て中は孤独を感じるし、仕事も思うように進まない。理想の母親像と現実の自分との違いに落ち込んでも、『母の友』は今のままで大丈夫だよ、と言ってくれる存在。違うことは悪いことじゃない、子育てはもっと多様でいい、自由でいい、と淡々と伝え続けている」。そう話し、読者としても信頼を寄せます。

世代間の橋渡し(イラスト)●世代間の橋渡し

「孫が生まれたので定期購読を再開した」などと2世代、3世代で親しむ読者も増えてきました。伊藤編集長は「情報のターゲットが細分化されている今、こうした間口の広い雑誌は珍しい。これからも『母の友』という誌名は変えず、その時代の子育てに寄り添い、世代間の橋渡しができるメディアでありたい」と話しています。


毎日新聞くらし医療部

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※掲載されている情報は2020年1月時点での情報であり、最新の情報と異なる場合があります。