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親が離婚、子ども支援策試行


親の離婚は、子どもの生活にも少なからず影響を及ぼします。親との関係や環境の変化に直面したときの支えにしてもらおうと、離婚に伴う手続きや子どもの権利について学ぶ法教育プログラムを研究者グループが開発し、試行しています。

親のケンカ中に耳を塞ぐ子ども(イラスト)●法教育プログラム

「母と父がどんな意見を持っているか聞きたかった」「自分がどういう状況にあるか知りたかった」。1月下旬、東京都中野区のシェアハウスの一室に、親の離婚や別居を経験した小学5、6年生の3人が集まっていました。当時の気持ちや、あれば良かったと思うことなどを話し合い、それぞれの意見を基に憲章「こどもチャーター」をまとめました。

憲章は5カ条で、「(依頼人を有利にしようとして)弁護士は雇われている人のために相手を悪くしない」「子どもが意見を言えるようにする」など、親同士の利害の対立を見てきた子どもならではの思いを反映しました。離婚訴訟や調停では家庭裁判所の調査が行われるが、その際に子どもがきちんと考えを述べられるよう、事前に質問を伝えてほしいとの条文がありました。

プログラムは家庭生活にまつわる法や制度の知識を身につけてもらおうと、神奈川大の井上匡子教授(法哲学)や、面会交流を支援するNPO法人ウィーズ(千葉県船橋市)らが作成し、初めて実施しました。30分ずつの4セッションで構成し、子ども自身が考える場面を多く盛り込みました。離婚にまつわる手続きを学ぶセッションでは、養育費や面会交流について説明があり、写真やイラスト付きで離婚訴訟や調停の仕組みを知ることができます。東京都目黒区で2018年、当時5歳の女児が死亡した虐待事件の新聞記事を題材に、子どもの権利について考えるセッションもあります。

●乏しい日本の制度

井上さんによると、子ども向けの法教育は消費者問題やいじめなどの分野を中心に行われていますが、離婚や家庭生活に関わるプログラムはあまりないそうです。共同研究者で英国の法制度に詳しい大阪工業大の高田恭子准教授(家族法)によると、英国は離婚などに関して政府機関が子どもに情報提供しています。7〜25歳のメンバーが司法制度について提言する制度もあり、離婚手続きなどにも子どもの意見が反映されやすい仕組みとなっています。

日本国内でも2013年に施行した家事事件手続法で、親権など子どもが影響を受ける手続きでは本人の意思の把握に努めるよう定められました。弁護士が代理人となって子どもの意見を伝える「子どもの手続代理人制度」もありますが、利用実績は一部のケースに限られ、意見表明の難しさは残っています。井上さんは「親の離婚や別居は子どもにとって身近で大事な問題ですが、情報は届きにくい面があります。プログラムを少しずつ改良しながら、どのように社会に還元できるか考えていきます」と話しています。

LINEで相談も(イラスト)●精神的な支えも

親同士のいさかいや親との離別に悩む子どももいます。ウィーズが無料通信アプリ「LINE」で受け付けている相談には「不安で仕方がない」「死にたい」などの訴えが寄せられています。自身も中学生の時に両親が離婚した光本歩理事長は「『親が何とかすべきだ』などと個人の問題として捉えられがちで、子どもへの精神的なサポートが必要という認識を持っている人は少ないのです」と指摘しています。

相談は学校を終えて自宅で過ごす夜から朝にかけて多く寄せられ、1人の子どもから数日続けて届くこともあるといいます。光本さんは「話せる友達はいないという子が多く、父母も余裕がありません。伴走してくれる存在は必要なのです」としたうえで、両親の離婚や別居について「一部の特別な家庭の問題ではなく、誰もが直面する可能性はあります。大人は、何の非もないのにつらい思いをしている子どもの声を聞いてほしいですね」と話しています。


毎日新聞くらし医療部

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