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ペット医療、目立つトラブル


ボールを追いかけるワンちゃん(イラスト)「ペット医療」を巡るトラブルが目立っています。家族同然に過ごすようになった飼い主側の意識の変化もあり、人間と同じような扱いを求める声が上がっています。

●愛犬死に訴訟に

適切な治療をせずにノーフォークテリアの愛犬ラドウィン(当時9歳)を死なせた――。東京都内の夫妻が昨年12月、群馬県内の動物病院を相手取り、慰謝料など計550万円の支払いを求める訴えを東京地裁に起こしました。裁判で動物病院側は過失を否定しています。

ラドウィンをペットホテルに預けていた2018年4月。訴状などによると、数日前からの軟便が下痢になり、嘔吐もしました。ホテルスタッフが近くの動物病院に連れて行きましたが、獣医師はホテルにある抗菌薬を与えるよう指示しただけでした。

翌日も下痢が続き、ラドウィンの意識が低下しました。獣医師は点滴などを施しましたが、「手に負えない状態」だったのに転院させることをせず、そのままラドウィンは死んでしまいました。

医師でもある夫は「(死は)下痢と嘔吐による脱水などが原因だった」と主張しました。訴えでは「体重などの聞き取りや検査をはじめ、普通の治療をしていれば死は避けられた。救命措置も不十分だった」としています。

「子どもがいない私たちにとって、この犬が『かすがい』。満足な治療をしてもらえず、飼い主にみとられることもなく、無念の死を孤独に迎えた」。そう言って夫妻は悲しんでいます。

動物病院側は毎日新聞の取材に対し「適切な対応と治療を行った。(持病があるため)かかりつけ医に診せるよう指導したのに、翌日も当院を受診し、死んでしまった。死因の一つとして、獣医師に伝えられていない薬の投与もあると推定される。対応に問題はない」と回答し、訴訟で争う方針です。

動物病院で診てもらうワンちゃん(イラスト)●増える動物病院

近年のペット人気の高まりに伴い、飼い主はペット医療にもお金をかけるようになり、それにつれて動物病院も増えてきました。開業の届け出によると、都内の動物病院はこの10年間で1.5倍の約1800カ所に増加した。都内で老犬ホームを営む渡部帝さんは「獣医師が増えたことで全体の医療レベルが上がり、ペットの長寿化に貢献しています」と話しています。

ただ、課題もあります。人間の医療と同じように、都市部と地方とで獣医師数や病院数に格差があるそうです。動物病院が最も少ないのは福井県の55カ所です。渡部さんは「診療内容によって獣医師にも得意、不得意があります。それにもかかわらず、地方の場合は近所にせいぜい1カ所あるだけです」と指摘しました。

飼い主がペットに注ぐ愛情は深いものがあります。ペットに関する訴訟を扱ってきた渋谷寛弁護士は「医療ミスに対して『見過ごせない』『二度と繰り返してほしくない』と思う飼い主が増えた」と話しています。

●司法による救済、壁

だが、司法による救済には大きな壁がありそうです。たとえば人間が医療事故で亡くなった場合、慰謝料だけでも2000万〜3000万円が認められています。一方、ペットの場合は「物」のような扱いで、20万〜40万円が相場です。

原告の夫妻は「一生忘れることができない悔しさ」と、愛犬の死を嘆いています。同じ家族にもかかわらず、人間とペットの「命の格差」は埋まらないままです。


毎日新聞くらし医療部

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