お役立ち情報/情報ものしり帖


安さで輝く人工宝石


天然ダイヤモンドの代替品として、人工宝石に注目が集まっています。天然ダイヤより安価なのが魅力で、ダイヤ原石供給の最大手「デビアス」(本社・英国)が販売を始めたほか、日本企業も相次いで参入しています。

注目の人口宝石(イラスト)「天然ダイヤ一つ分の価格で何種類も買え、カラットも大きくできます。輝きも本物同等なのが魅力です」。東京都の女性会社員(43)は、人工宝石の魅力をこう語っています。愛用しているのは、ダイヤに似た無色透明の人工石「モアサナイト」を扱うブランド「ブリジャール」の商品です。10万〜20万円のピアスや指輪を5点所有しています。「大手ブランドの天然ダイヤなら70万円はするのです」と話しました。

ブリジャールの小原亦聡社長によると、炭素でできている天然ダイヤと異なり、モアサナイトは炭化ケイ素が原料で、米国や中国で製造されています。ダイヤより衝撃に強く欠けにくいため、「プリンセスカット」と呼ばれる四隅がとがった四角形のデザインでも、破損する心配がなく身につけられます。

かつて金融機関に勤めていた小原社長は、米国でモアサナイトの人気が高まっていることを知り、2017年に起業してインターネット販売を始めました。海外でモアサナイトの仕入れからジュエリーへの加工までを行い、初年度に1億円を売り上げたそうです。2018年10月には東京・銀座にショールームを開設し、現在は売り上げの3割を婚約指輪が占めています。

天然ダイヤと同じ素材でできた合成ダイヤを扱うブランドも登場しています。ダイヤ卸業者の福島剛さんは「宝飾業界は中間業者が多いため末端価格が高く、消費者に身近なものになっていない」と疑問を抱きました。そこで、合成ダイヤのブランド「プライマル」を設立したのです。今年2月にネット通販を始め、ピアスやネックレスなどを1万円台から販売しています。

矢野経済研究所の深澤裕・理事研究員によると、米国では1000軒以上の宝石店が合成ダイヤを販売しています。人気の高まりの理由を「中国やインドで高品質の合成ダイヤを安価で造れるようになったことが大きいです」と説明しています。特に中国は、先端技術として国をあげて育成しているそうです。2018年には、デビアスが合成ダイヤ専門ブランド「ライトボックス」を設立し、さらに注目を集めました。

深澤さんは、環境や社会に配慮した消費行動を意味する「エシカル消費」がブームとなっていることも背景にあると分析しています。天然ダイヤは紛争地域で外貨獲得の資金源になっていることが指摘されています。2006年に公開された米映画「ブラッド・ダイヤモンド」でも「紛争ダイヤ」の実情が題材となり、話題を呼びました。

キンバリー・プロセス(イラスト)紛争ダイヤの流通を防ぐため、国際的な証明制度「キンバリー・プロセス」があります。日本にダイヤの原石を輸入するには、この証明書が必要です。ただ、NPO法人「ダイヤモンド・フォー・ピース」の村上千恵・代表理事は「加工済みのダイヤは認証の対象外になっているなど、抜け穴が多くあります。しかもダイヤの採掘では劣悪な労働環境や労働条件、環境破壊など問題が山積しているのです」と訴えています。

一方で村上さんは、合成ダイヤの製造工程にも課題があるとして、「『合成ダイヤに切り替えれば問題が全て解決する』というのは短絡的です」と指摘します。例えば、製造時には約2カ月にわたって1000度前後の高温・高圧状態を維持するため、多くの電力が必要となります。プライマル取締役の新間理貴さんは「完全にエコと言えません。再生可能エネルギーで電力を賄っている合成ダイヤメーカーもあります。今後はそういったメーカーとの取引を増やしていきたいと考えています」と話していました。


毎日新聞くらし医療部

Copyright© 2003 - 2020 Kyoei Fire&Marine Insurance Co.,Ltd. All rights reserved
※掲載されている情報は2020年4月時点での情報であり、最新の情報と異なる場合があります。