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「昆虫愛」を絵本に込めて


セミが鳴き始めました。夏休み、虫捕りが楽しくなるシーズン到来です。草むらや雑木林なら、「3密」だって関係なし。さあ出かけよう!

子供たちに紹介したい絵本があります。SNS上で「ゆるふわ昆虫図鑑」として表情豊かな愛らしい昆虫の姿を描くイラストレーター、じゅえき太郎さん(31)の新作絵本です。この絵本、全然ゆるくありません。昆虫のリアルな迫力に満ちています。込められた思いをじゅえきさんに聞くと、そこには創作活動を貫く深い「昆虫愛」がありました。

昆虫図鑑を読む子ども(イラスト)●少年の目線で

新作絵本のタイトルは「すごい虫ずかん くさむらの むこうには」(KADOKAWA)。虫探しに行く少年が、カマキリ、オニヤンマ、ゲンゴロウなどに出会う物語です。羽の一枚一枚、足の一本一本まで細部を描き込んだ色鮮やかな絵に加え、アングルが飽きさせません。少年が転び、その目線で脚や羽を広げて威嚇するオオカマキリが画角いっぱいに現れる、といった具合です。

「下から見た方が、カマキリはかっこいいから、少年に転ばせたわけです。カマキリだけでなく、『草むらのスター』たちに次から次へと登場してもらっている。一番かっこよく、迫力あるように見えるアングルを、考えに考えました」

絵の隅に描かれた虫眼鏡の枠組みの中に詳しい解説も。キアゲハなら、「たまごから成虫になるまでは、夏で30〜40日くらいです」などと書き込まれ、図鑑の要素もあります。監修はむさしの自然史研究会の須田研司さんが担当しました。

●「買う」から始めたが

東京都内で育ちました。カブトムシやクワガタが商業施設で売り出されると、母にせがんで買ってもらいました。「売られているのって弱っていて、帰宅中に死んじゃったりして」。そんな少年にとって、母の実家の岩手県に帰省する夏休みの1週間は、自然の中で虫捕りができる幸せな時間でした。

当時の虫のスケッチを模したものを、今回の絵本にも収録しています。その絵を見ると、目を輝かせながら、細部をよく観察し、ペンを走らせる少年の姿が浮かびます。

大人になっても、虫好きは続きました。絵画の世界で生きていこうと思った時、「昆虫のフォルムやデザイン性ってすごい」と改めて思いました。「このサイズ感で、洗練されていて」

虫をモチーフにした作品で2016年、絵画の世界の登竜門「岡本太郎現代芸術賞」に入選。「これで絵画で食える」と思いましたが、絵で生計は立てられませんでした。

親子で虫捕り(イラスト)●「現代の鳥獣戯画」

出版社に飛び込みで作品を見せたり、人気イラストレーターのサイン会でアドバイスを求めたりもしました。「君は虫ばっかり描いている。他のも描いたら?」と言われたことも。でも、虫以外を描くモチベーションがわきませんでした。

同じ頃、ツイッター上で「ゆるふわ昆虫図鑑」を始めます。どこにでもありそうな会社組織の悲哀も感じる「働きアリ」など、擬人化した虫たちを表情豊かに描きました。これが、ヒットしました。フォロワー数は膨らみ、「現代の鳥獣戯画」と言われることも。17年ごろから、敬愛する岡本太郎氏の名前が入る、「じゅえき太郎」を名乗るようになりました。今も時間さえあれば、虫捕りに出かけます。

最後に、子供たちにこんなメッセージを送りました。「新型コロナで地方に虫捕りに行けなくても、都会にもたくさん、虫たちはいます。ちょっとした草むらや雑木林さえあれば、スター性のある虫たちもいる。ガに襲われたりしないように、服装だけは気をつけて、虫に会いに行ってみてください」


毎日新聞統合デジタル取材センター

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