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刀剣ブームが後押し 「水没刀剣」修復に2500万円超す支援


熊本県人吉市の国宝・青井阿蘇神社に平安時代以降奉納されてきた貴重な刀剣77振りが7月の九州豪雨で水没しました。約3000万円かかるとされる修復費用の一部をまかなおうと、関係者がインターネット上で寄付を呼びかけたところ、人気ゲームを背景にした若い女性の間の刀剣ブームもあって全国で支援の輪が広がっています。神社は「大変感謝している。取り戻した刀の輝きが、人吉の復興のシンボルになれば」と期待します。

さびてしまった多くの刀剣(イラスト)寄付はクラウドファンディング(CF)サイト「CAMPFIRE(キャンプファイヤー)」で8月13日に始まり、開始後わずか1時間半で目標額の500万円を突破。これまでに全国の約2100人から2500万円を超す支援が寄せられています。

7月4日未明の豪雨で、神社は境内まで水につかり、本殿が床下、拝殿や社務所は床上まで浸水しました。刀剣の他、装束やみこし、古文書なども水没し、神社正面の禊(みそぎ)橋は欄干が濁流に押し流されました。

806年創建とされる神社には、平安から江戸時代のさまざまな年代の名工による77振りの刀が奉納されてきました。ですが、刀剣を保管していたたんすも水没して開かなくなり、被災から2日後に壊して取り出すと、大半が既にさび始めていました。この中には名刀として知られる「豊後国行平」や「二代目虎徹(こてつ)」による刀も含まれ、江戸時代前期の作で神社の「御神刀」でもある「高井越前守源信吉」の太刀も刀身がさび始めていました。福川義文宮司は「毎年全ての刀を手入れし、次の時代に引き継いでいくのも私の役目。こんなにすぐさびるのかと驚いた」と振り返ります。

熊本県八代市の刀工が応急処置をしましたが、さびを取り、全ての刀剣を元の状態に修復するのには3000万円ほどかかるといいます。神社自体の復旧と再建も進めなくてはならず、費用も人手も足りない中で、CFを活用した支援を思いついた関係者の一人が、古武術「兵法タイ捨(しゃ)流」を受け継ぐ山本隆博さん(50)です。

クラウドファンディングで寄付兵法タイ捨流は人吉・球磨地方の相良藩で生まれましたが、山本さんが習い始めた頃は弟子が2人しかおらず、存亡の危機にありました。ですが、青井阿蘇神社が演武の披露の場を提供して支援を続け、今では山本さんの門下生が海外を含め150人に増えるまで再興しました。それだけに「恩返しがしたかった」と言います。

国内では近年、刀剣を擬人化したキャラクターが活躍するゲーム「刀剣乱舞」のヒットが火付け役となり、「刀剣女子」と呼ばれる若い女性を中心にした刀剣ブームが続きます。刀剣修復を支援しているのも若い世代が多く、寄付した人の中心は30代で、女性が約7割を占めるといいます。山本さんは「普段はネガティブな言葉ややりとりが多いインターネットの世界で、今回の取り組みに一つも批判や中傷の言葉がなかったことに、復興への希望を感じた」と話しました。


毎日新聞西部報道部

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※掲載されている情報は2020年9月時点での情報であり、最新の情報と異なる場合があります。