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相次ぐクマ襲撃 「新世代」登場か


クマの襲撃が全国で相次いでいます。どうやら、人間を恐れない「新世代クマ」がいるようです。10月19日、石川県加賀市のショッピングセンターで、クマが店内に入ったほか、16日には群馬県みなかみ町の旅館で、宿泊客の男性が露天風呂でクマに襲われ軽傷を負いました。相次ぐ襲撃について、クマ被害を長年研究してきた専門家は、ドングリなどの凶作だけでなく、人里の変化が招いた別の要因があると指摘します。

クマがショッピングセンターに!?(イラスト)●「立てこもり」話題に

クマが店内に立てこもった加賀市のショッピングセンター「アビオシティ加賀」。搬入口からクマ1頭が店内に入っていったと110番通報があり、従業員が一時避難しました。クマはその夜、地元猟友会が駆除しましたが、ツイッターでは「立てこもり」がトレンド入りするなど話題を呼びました。石川県内では17、18日に、現場近くの温泉で計4人がクマに襲われてけがをするなど出没が相次いでいました。

●畑作業の女性が死亡

16日にはみなかみ町の旅館「宝川温泉汪泉閣(おうせんかく)」で、露天風呂に入るために屋外通路を歩いていた男性客がクマ(体長約1メートル)に襲われ、左腕や右足などをかまれ、軽傷を負いました。

10月1日にも、新潟県関川村で、畑作業をしていた女性がクマに襲われ、顔や脇腹などをひっかかれ、その10日後に死亡しました。環境省によると、ツキノワグマやヒグマによる昨年度の人身被害人数は157人で、有害捕獲数は6285頭で、いずれも過去10年で最高。今年度についても、8月時点で人身被害人数は60人で、有害捕獲数は3207頭に上っています。

クマの襲撃について、環境省野生生物課の担当者は「地域によってさまざまな要因がありますが、昨年度については、(ドングリなど)堅果類の凶作が一つの要因になっているとみられます」と分析します。

●里山荒廃、人を恐れず

「ドングリなどの堅果類の凶作が主な原因ですが、その背景には、もっと深い要因があるのです」。相次ぐ襲撃について、ドングリの凶作以外の背景を懸念しているのは、クマの調査や保護活動を行っているNPO法人「日本ツキノワグマ研究所」(広島県)理事長の米田一彦さん(72)です。

米田さんによると近年、人間を怖がらない「新世代クマ」が増加しているというのです。「ここ20年ぐらいは、里山の荒廃化が進み、木々が成長し、もはや(山深い)奥山のようになってしまいました。ここが若いクマの生息域となり、人の生活圏に近いところで暮らすようになったのです。そういったクマは、車の音などの人間社会の音にすっかり慣れていて、人を恐れない。今年のようにドングリが凶作になったりすれば、すぐに人間の生活圏に出てくるのです」

米田さんは秋に出没するクマの危険性にも言及しました。「秋に出てくるクマは春に比べて体格も大きくなっています。多人数が襲われやすく、けがも重傷化しやすくなるのも特徴です。また、人里に出てきたクマは、自分が人間から丸見えとなっていることを知っており、進む方向に動く人間がいたら(迷わず)排除してくるのです」

出会ったら「動かない」が重要(イラスト)●出合ったとしたら

もしも、クマに出合ってしまったら、どう対処すればよいのか。米田さんは「石のように、動かないことが重要です。クマの目につかないようにしなければなりません」と断言します。

「もし、攻撃されそうになったら、塀の角やくぼ地、側溝に伏せて、(クマに接する)面積を少なくなるようにしてください。特に、首や腹部などを守るようにするのが重要です」と助言します。

「平野部に雪が降れば、クマは森に帰っていきます。それまでは、注意が必要です」

その上で、米田さんはクマの侵入を防ぐ対策の必要性を訴えます。「(手入れされていない)里山が広がり続けており、新世代クマが人間の生活圏近くに生息するようになりました。これは構造的な問題であり、これからも課題として続いていくでしょう。なかなか対策は難しいですが、一つの対策としては、クマの進入路となっているところの草を刈ることは有効でしょう。クマはやぶなどがない明るいところが嫌いなので、そこを通らなくなります」


毎日新聞統合デジタル取材センター

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