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映画『鬼滅の刃』国内の歴代興収2位


10月16日に公開されたアニメ映画『劇場版「鬼滅の刃」無限列車編』が好調です。初日から45日間で動員数2053万2177人、興行収入275億1243万8050円を記録。歴代興行収入ランキング(邦画と洋画含む)では、『タイタニック』(262億円)を超え、2位にランクインしました。子どもだけでなく大人もハマっています。コロナで萎縮した世の中をどこまで盛り上げるのか。人気の背景を探りました。

映画のチケットを発見する親子(イラスト)●大作が軒並み公開延期 コロナ禍で独壇場

公開から文字通りロケット・スタートでした。配給の東宝などによると、公開から10日後の25日には107億5423万円を記録。これまで興収100億円を超えた日本アニメは7作ありますが、公開から10日間での100億円突破は史上最速です。歴代興収記録1位の「千と千尋の神隠し」(308億円)、2位の「君の名は。」(250億円)とも100億円突破までいずれも3週間以上を要しました。

「鬼滅の刃」は全国の映画館の8割以上で上映されています。公開初日からしばらくは、早朝から深夜まで、複数のスクリーンで40回以上上映したシネコンもありました。今年は新型コロナウイルス禍で邦画、洋画ともヒットを期待された大作が軒並み公開延期や中止となり、興行成績は例年の半分以下。「鬼滅の刃」は子どもだけでなく親世代にも人気で、家族で見られる映画として観客が押し寄せています。さながら映画界の救世主です。

映画ジャーナリストの大高宏雄さんは「今回の上映はすべてに異例。人気作を集中的に上映するのがシネコンのシステムで、『鬼滅の刃』も当初から興収100億円は見込まれ期待は高かった。とはいえこれまでは他の作品とのバランスも考慮していたが、今回は他に作品がなく、上映が集中した」と分析します。そして「公開から日数を経ても、観客動員が落ちない。興収250億円は堅いだろう」と予測します。

●大人にも人気の物語性

そもそも「鬼滅の刃」って何、という初心者のために、ざっとおさらいしておきましょう。もともとは、2016〜20年に「週刊少年ジャンプ」(集英社)で連載された吾峠呼世晴(ごとうげこよはる)さんの漫画。大正時代の日本が舞台で、人間を食べる鬼たちがすみ、卓越した能力を持つ「鬼殺隊(きさつたい)」が、鬼と激しい戦いを繰り広げます。鬼は首を切られるか日光に当たらないと死なず、鬼の血が体内に入った人間も鬼と化してしまいます。主人公の竈門炭治郎(かまどたんじろう)は、家族を鬼に殺され、生き残った妹の禰豆子(ねずこ)は鬼になってしまいます。炭治郎は厳しい修行の末に鬼殺隊に加わり、鬼と戦いながら妹を救おうと奮闘します。

戦闘場面の描写は時に過激ですが、笑いも交え、復讐譚(ふくしゅうたん)と同時に炭治郎の成長物語でもあります。いちずで心優しい炭治郎の家族や仲間への思いが涙も誘います。「無限列車編」はテレビアニメの続きで、単行本の7〜8巻に相当。鬼殺隊の中でも最上位の実力を持つ9人の剣士「柱」のうちの1人、煉獄杏寿郎(れんごくきょうじゅろう)が登場。炭治郎らと共に、手ごわい鬼と対決します。

アニメ評論家の藤津亮太さんは「炭治郎は大変な重荷を背負わされるが、嘆くのではなくそれを自ら引き受ける。人生の不条理に直面した時、思いの強さと努力で乗り越える姿が、現代の観客の支えになっているのでは。また、敵役の鬼の側にもドラマがあり、熱いだけでなく泣ける作品でもある」と、子どもから大人まで幅広く受け入れられた物語性を分析します。

●多様なメディア展開で旋風

雑誌連載中の19年4〜9月、TOKYO MXテレビなどでアニメが放送され、人気に火が付きました。土曜深夜の放送でしたが、映像の質の高さがアニメファンの間で話題となり、評判は一般にも広まりました。藤津さんは地方局深夜帯での放送だったことで、作品性が高まったと指摘します。「キー局では表現規制など局の意向が強くなる。地方の深夜枠の方が、製作委員会主体で作品作りができるため、作品性を全うしやすい。カバーする範囲が狭くても、インターネットなどで配信すれば、全国にも届けられる」。実際、アニメ版はその後、ネット動画でも配信され、幅広い層に浸透しました。

多様なメディア展開と商品タイアップ(イラスト)漫画の単行本22巻までの売り上げは電子版を含めて1億部を突破。雑誌連載は20年5月で終了し、12月に最終23巻の発売が予定されています。小説版もヒットし、日販調べでは「片羽の蝶」「しあわせの花」が、20年上半期ベストセラーの1、2位を占めました。女性アーティスト、LiSAさんの歌う映画の主題歌はオリコンで2週連続1位を獲得。ゲームや舞台にもなり、キャラクター商品などのタイアップも順調で、あらゆるメディアでの展開が渦巻きのように人気を広げていく現象が起きています。

映画「無限列車編」は、「鬼滅の刃」の物語全体の半ばにも至らない部分のストーリーで、今後もアニメ化、映画化が期待されます。


毎日新聞学芸部

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