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べたつかない上品な甘さの絶品佃煮


佃煮(イラスト)佃煮(つくだに)は江戸時代、江戸の名物として全国に広まったといわれます。各地に農水産物を生かした「ご当地佃煮」があり、東京でもスーパーなどで買えます。一方で、なかにはこだわりの製法で東京都地域特産品認証食品となっている佃煮もあります。その製造現場を訪ね、職人の技を垣間見ました。

東京都江東区東雲(しののめ)にある「佃宝(つくほう) 深川東雲本店」。1957年に創業し、「調味料まで無添加の手作り佃煮」が看板です。初代の水谷豊夫さん(故人)が生み出した製法をいまも受け継いでいます。豊夫さんの妻で2代目の水谷秀子さん(83)が「高度成長期を前に、佃煮は塩辛くて硬くて黒く、ひとすくいでご飯が茶わん1杯食べられるのが当たり前の時代でした」と創業当時を振り返ります。


「体が頑強でなかった主人は逆に、甘辛で軟らかく色もきれいな佃煮を考えたのです」

初めて店舗を構えたのが、おばあちゃんの原宿、巣鴨だったこともあり、お年寄りも食べやすく体に優しい佃煮を追求したそうです。

豊夫さんの愛弟子で、佃煮職人歴28年の同社専務、鈴木正信さん(51)に極意の一端を説明してもらいました。

まず、素材は産地を厳選します。しょうゆは工場からタンクローリーで運ばれ、冷蔵庫内のタンクに直接くみ上げて、空気に触れる機会を最小限にします。砂糖は純度の高いざらめ、寒天は農家手作りの細切り寒天、水あめやみりんは濃厚だが切れが良いもの……。原材料にはこだわり抜くと鈴木さんは言います。

「こういった原材料で、素材ごとに異なる元だれとしょうゆを作っています」

シラスの佃煮を作る作業室に入りました。直径73センチの大釜が並んでいます。だが、一度に煮るシラスは4キロで釜の深さの5分の1にも満たしません。

「味を均等に染み込ませるため、少量で作るのです」

両手のへらで何度も返しながら作ります(イラスト)火力の強い灯油の直火(じかび)で、あくを取り、両手のへらで何度も返しながら40分ほど煮ます。焦げ付かないよう、出来上がるまで片時も釜の前を離れません。

「煮る時間や味付けも、季節や気温、湿度などによって日々変わります。釜からあげる頃合いは見た目や音で決めます。職人の勘です」

シラス用のしょうゆと元だれをなめてみました。どちらも、甘辛で濃厚ですが、喉にまとわりついたりせず、驚くほどすっきりしています。煮あがったシラスを口に含むと、べたつかない上品な甘さとシラスの感触がふわりと広がりました。

鈴木さんが笑顔で話します。

「素材のすべてが上質だからこそです。先代は健康志向を60年も前に見越していた。先見の明があったのです」

受け継がれた職人のこだわりは、江戸の粋そのものです。

取扱店は以下の通りです。佃宝深川東雲本店(電話03・3529・2940、ファクス03・3529・2941)、同銀座歌舞伎座店(電話080・3345・2940)、同豊洲市場隣接「江戸前場下町店」(電話070・1254・2940)の各店舗。また同社ホームページ(http://www.tsukuhou.com/)でネット通販もしています。しらす、細こぶ各100グラム690円、生あみ同580円、上たらこ同1000円、赤えび同640円、上あさり同830円、ふき豆150グラム550円(いずれも税抜き)など。贈答にも適した各種折り詰めもあります。

扱いは魚でも野菜でも同じです。魚を例にします。

@煮あがったら、まず魚だけを器にあげます
A魚に2〜3分風をあてて余分な水分をとばします。うちわでも扇風機でも、換気扇の下でもよいです。
B鍋に残っているタレを1〜2分煮詰めて水分をとばします
Cタレを魚にかけます。水分がとんだ分、濃くなったタレを魚が吸い込み風味が増します。


毎日新聞東京地方部

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