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古地図片手に散歩したい 時の流れに思いはせ


海外はもとより、国内でも遠くへ旅に出づらい今日このごろ。江戸時代の古い地図を片手に、近所の街を散歩したり、史跡を訪れたりするのはいかがでしょうか。200年前の道筋は意外と残っています。ゆっくり歩きながら、時の流れに思いをはせるのも悪くないです。専門家と実践してみました。

古い地図を片手に散歩(イラスト)「古地図と現代の地図を見比べるポイントの一つが追分です」。こう教えてくれるのは「古地図と地形図で発見! 江戸・東京 古道を歩く」(山川出版社)などの著書がある古道研究家で、シニア向けのガイドも務める荻窪圭さん(57)。「追分」とは街道の分岐点のこと。荻窪さんは東京メトロ南北線・東大前駅近くの大きな交差点で「追分一里塚跡」の看板を指さします。

早速、1671(寛文11)年の「新板江戸外絵図」を開き、看板の道筋そっくりのポイントを探すと、「をいわけ」「一里塚」の文字を見つけます。江戸時代の「五街道」の一つ、中山道と脇往還(脇道)の日光御成道の分かれ道。「今では旧中山道より旧日光御成道の方が交通量が多くにぎやか。過去と現在とのこうしたギャップが面白い」と荻窪さんは話します。

この「本郷追分」の少し北を右に入り、直角の曲がり道を曲がってしばらく行くと丁字路にぶつかります。ここに現在建つのは鐘楼のとんがり屋根が愛らしい東京聖テモテ教会。1950年の落成。東京大空襲で焼失した旧聖堂は09年に誕生し、森鴎外の小説「青年」にも登場するといいます。「新板江戸外絵図」や江戸末期の「江戸切絵図」を見直すと、すぐご近所に「大恩寺」があったはずですが、今は跡形もありません。数百メートルのうちに江戸、明治、令和を結ぶ歴史のタイムトンネルをくぐっているような気分になります。

歩を進めながら荻窪さんに古地図散歩のコツを尋ねると、「自分なりの視点を持って歩くことが大切」。古道散歩イベントの参加者の興味は道筋から表札やマンホール、電柱の番号札までさまざまだそうです。自身にとっては、交差点の形に見られる江戸時代の道の名残が「萌(も)えポイント」と笑います。「車に気をつけ、周囲を観察しながら歩くと必ず発見があります」と荻窪さん。「そこかしこに隠れている歴史の小さな痕跡を見つけるのも古地図散歩の楽しさ。それに気づきはじめると、どこを歩いても面白く思えるでしょう」

●ネット無料公開もネットで公開されている古い地図もあります(イラスト)

さて、古い地図をどこから入手すればいいのか。古地図散歩の書籍を書店で買ったり、図書館で借りたりするのと同時に、記者は「国立国会図書館デジタルコレクション」(https://dl.ndl.go.jp/)で探すことを勧めます。ここで「インターネット公開」されている古地図は、自由にダウンロード、プリントアウトできるのです。

まず同コレクションのトップページから「詳細検索」のページに入り、「古典籍資料(貴重書等)」の項目をクリック。「公開範囲」を「インターネット公開」、「対象」を「絵図」のみチェックし、「キーワード」に「江戸」「京都」「大坂」といった旧都市名を入れて検索します。書籍の「参考文献」で紹介されている絵図名を入力するのも手っ取り早いです。

江戸など大都市以外の古地図は同コレクションに所蔵されていない場合もあります。そんな時は「伊能図」で検索すれば、江戸時代の測量家、伊能忠敬らが200年前に完成させた「大日本沿海輿地全図」の一部を閲覧できます。日本列島すべてを網羅していないものの、陸奥から信濃まで、各地の海岸線や街道、村や城が描き込まれています。現代の地図に比肩する正確さと日本画のような美しさ。往時の旅人になったつもりで、道をたどってみましょう。


毎日新聞東京学芸部

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※掲載されている情報は2021年4月時点での情報であり、最新の情報と異なる場合があります。