お役立ち情報/情報ものしり帖


コロナ禍で注目、在宅避難


「地震列島」とも言われる日本。被災時の避難先として、公共の避難所をあてにしている人は多いでしょう。ですが、大都市の避難所数は十分ではなく、新型コロナウイルス禍の中では、「密」への不安も強いです。そこで最近注目されているのが、自宅に待機してライフラインの復旧を待つ「在宅避難」です。具体的対策を専門家に聞きました。

●10日耐える準備

大震災が起きた際、住民全員が避難所に入れるわけではありません。東京都の場合、避難所約3200カ所の収容人数は、人口約1300万人に対して計約320万人。コロナ禍の「3密」回避のため、収容者数はさらに減る見込みです。安全を確保しながら自宅で生活を続ける在宅避難への注目が高まるゆえんです。

家具・家電に地震対策を(イラスト)ではどう備えればいいのでしょうか。「マンション防災の新常識」を昨年11月に出版した災害対策研究会事務局長の釜石徹さん(69)と、同10月に冊子「在宅避難生活のススメ」をまとめた防災事業経済協議会の川内一毅・住宅防災部会長(67)に聞きました。釜石さんは「プライバシーや衛生面を考えれば、倒壊や火災の恐れがない限り自宅にとどまるべきだ。情報確認や支援物資を受け取りに避難所へ行くのは、発災直後の混乱が収まった3日後ぐらいでいい」と説きます。一方、川内さんは倒壊や火災の恐れがある場合に加え、海、川、崖のそば、逃げ道が1本しかない場所は「安全が確認されるまで避難所へ行った方がいい」と勧めます。ただし2人とも、電気・ガス・水道などの停止は、避難所へ行く理由にならないといいます。「約10日間を目安に、自宅で生き抜く方法を考えてほしい」と話します。

釜石さんが事前に必要と考えるのは@耐震性のある家Aけがをしない備えB10日間暮らせる備え――です。1981年6月に耐震基準が改められており、それ以前にできた建物は耐震補強をしているか確認してください。

けがへの備えが必要な場所として、睡眠中に無防備になる寝室を2人は真っ先に挙げました。その次に、滞在時間の長いリビングや台所。釜石さんは「倒れると危険な背の高い家具は、寝室や居間に置かないように」と訴えます。別室に移せない場合は、寝ている所に倒れないように向きや場所を変えて固定します。出入り口をふさぐような場所も避けてください。固定は突っ張り棒だけでは不十分で、滑り止めマットを併用します。棚に物を置く場合は、重くて硬いものや割れるものは下に置く。テレビや電子レンジも粘着マットなどで固定すべきだといいます。

台所は危険なものだらけです。釜石さんは「開き戸の食器棚には市販のストッパーをつけてほしい」と呼びかけます。サイドボードや食器棚といった家具のガラスには全て市販のガラス飛散防止フィルムを貼っておくとよいです。蛍光灯は、棒状のものは地震で外れて落ち、つり下げタイプは揺れて天井にぶつかったりして割れる可能性があります。LED電灯や、天井に固定するタイプに替えた方がいいです。

電気・ガスが止まっても調理できるように(イラスト)●カセットコンロを

次に10日間生活するための備えを考えましょう。電気やガスが止まっても調理できるよう、カセットコンロの準備は必須です。食材は普段買い置きしているものは全て保存食となるため、特別な保存食より米、パスタなどの主食を早めに買い足しておくといいです。釜石さんは「たった今地震が起きた時、家にあるもので10日分のメニューを考える訓練をしてほしい」と話します。

主食について釜石さんが勧めるのが、カセットコンロを使った湯煎調理です。お湯の入った鍋に具材の入った専用ポリ袋を入れて作ります。ご飯の場合、米1合に水200ミリリットルを入れてよくもみ、30分ほど湯煎します。袋は融点が100度以上ある高密度ポリエチレン製がよく、「湯煎調理袋」などの名称で売られています。弱〜中火で調理し、余熱も使えば、カセットガスは9本ほどあれば10日間をしのげます。

飲料水は、家族構成によりますが2リットル入りペットボトルを10本ほど用意すべきだといいます。風呂は常に残り湯がある状態にします。湯煎用の水にも使えるし、携帯浄水器があれば飲み水にもなります。

●役立つ防臭袋

在宅避難で最も困るのがトイレです。市販の携帯トイレは凝固剤がついていますが、排水管に異常がなければ小便は便器に捨てた方が減量できます。大便は流せるまで自宅に保管せざるを得ません。釜石さんが推奨するのは大阪市のフィルムメーカー「クリロン化成」の防臭袋「BOS」。数日間保管しても全く臭わなかったといいます。川内さんは「ビニール袋を二重にして、間にちぎった新聞紙などの吸水材を入れれば携帯トイレの代わりになる」と助言する。

スマートフォンはコンセントに差しておき、モバイルバッテリーは使用後にすぐ充電するくせをつけておけば、発災直後に困ることはありません。停電に備えてベッド横に懐中電灯を置くか、停電時に自動で点灯するライトを寝室や廊下のコンセントに差し込んでおく。釜石さんは「防災意識の高い人でも、やっていないことは多い。ぜひ確認してほしい」と話しています。


毎日新聞デジタル報道センター

Copyright© 2003 - 2021 Kyoei Fire&Marine Insurance Co.,Ltd. All rights reserved
※掲載されている情報は2021年4月時点での情報であり、最新の情報と異なる場合があります。