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老後は田舎で暮らしたい 失敗しない移住


こだわりの田舎暮らしを想像する男性(イラスト)新型コロナウイルスの影響で、都心から郊外、地方への移住が増えています。中心は在宅勤務の増加で通勤頻度が減った若い世代です。一方で、定年後に地方でこだわりの田舎暮らしをしたいという希望も根強いといいます。インターネットを使ったセミナーや相談会が主流となる中、移住希望のシニア世代が知っておきたい最近の傾向や失敗しないコツとは――。

総務省が今年4月末に発表した2020年度の住民基本台帳人口移動報告で、「東京離れ」が顕著に表れました。東京都から流出した人口は昨年7月から8カ月連続で流入分を上回りました。20年度全体では流入分の方が多かったですが、その差は約7500人で前年度の1割未満。近年まれにみる少なさでした。流出先は神奈川、千葉、埼玉、茨城など、近隣の県で大きく増えました。

移住を自治体と連携して支援する認定NPO法人「ふるさと回帰支援センター」(東京都)が窓口相談者を対象にした20年の移住希望地ランキングでも、前年21位以下だった神奈川が9位、茨城が12位に上昇。静岡、山梨、長野など首都圏周辺の人気が高いです。同センターは「テレワークもしやすい『もう一部屋』の余裕や豊かな自然を求め、引っ越しに近い感覚での移住希望が増えた。『東京郊外』の概念はさらに広がった」とみています。

では、シニア世代の移住希望はどうでしょうか。20年の利用者の4分の1は50代で、同センター理事長の高橋公(ひろし)さん(73)は「地方で中古の庭付き戸建てに住み、無農薬の野菜作りなど、こだわりの暮らしを望む傾向は昔から変わらない」といいます。新型コロナを避けたいからか、半年や1年ほどの検討でサッと移住する例も散見されます。しかし、「数年かけて検討するのが一般的で、年齢が上がればなおさら入念な準備が必要だ」と注意を呼びかけます。

高橋さんは後悔しない移住のコツとして三つの準備を挙げます。

@移住の目的をはっきりさせる。誰と、どこで、何をして暮らすかを意識することで移住先も決まる。

A自分の体と相談する。持病があれば、定期的に通える距離に医療機関があるかどうか調べる。

B現地の暮らしを体験する。多くの自治体が「お試し移住」用の施設や住宅を1泊500〜1000円程度から用意している。

近畿と四国で2拠点居住をしている女性(62)は、会社を定年退職する前から毎年夏に場所を変えてお試し移住を体験しました。「海外に行って初めて日本の良さが分かるように、今暮らしている場所も含めた長所短所や自分のこだわり、これからの人生をどうしたいのかが見えてきた」といいます。

女性は無料で入れる温泉や、スーパーで格安で手に入る新鮮なカニなど、その土地ならではの恩恵を満喫。一方で、湿気が多く洗濯物が乾かなかったり、音や臭いが気になったりした場所もありました。日常生活を送って初めて分かったことです。

女性からのアドバイスは、役場で担当者に直接会うことです。移住に対する熱意や町の活力が分かります。そして、図書館に行くことです。郷土資料が充実しているので、観光名所を回るだけでは分からない魅力を知ることができるといいます。

とはいえ、現在のコロナ禍では現地訪問や面談もしづらいです。同センターでも昨年開催した移住相談会・セミナーは349回で、一昨年より4割近く減少。夏以降は9割近くがオンラインと対面の併用型となりました。

居住地を動画でチェック(イラスト)しかし、これによって首都圏一辺倒だった相談者の居住地が、近畿圏や中部圏にも拡大。セミナー参加者の移住希望地では、オンラインによる説明会や先輩移住者との交流の場をいち早く設けた和歌山県が1位となりました。同県ふるさと定住センターでは、町の雰囲気を知ってもらおうと担当者が車で移動しながら案内する動画を次々に配信。既に3市6町分を公開しています。

人気上位の県は、食材や謎解きなど多彩なテーマでイベントを開き関心を集めました。参加者の居住地が全国に広がり、従来の「都心から地方」だけでなく、「地方から地方」「2拠点居住」など新たな流れにつながるか注目されています。

若い世代に比べて人生経験が豊富なシニア世代。子どもの学習支援、昔遊びの伝承、パソコンや囲碁将棋の指導、傾聴など、社会活動で移住先から期待される存在でもあります。団塊の世代をはじめ、長年相談に乗ってきた高橋さんは「昔の肩書で威張る人や、『俺が、俺が』というタイプは嫌われる。肝心なのは地元の人や先輩移住者への思いやり。それさえあれば大歓迎されますよ」とエールを送ります。


毎日新聞大阪本社編集局

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※掲載されている情報は2021年6月時点での情報であり、最新の情報と異なる場合があります。