安眠ではなく、枕は何を守るためのものだったのか…
私たちの毎日に欠かせない枕ですが、どれぐらいの歴史があるのでしょうか?日本では、古墳時代の出土品として枕が発見されています。死者を古墳に埋葬するために、土や石、琥珀といった多様な材質を使用した枕が作られていたようです。当時、古墳に埋葬されるのは時の権力者であったため、この時代の枕は権力の象徴であったと考えられています。
時を経て万葉集の時代には、草や木、石などでできた枕が登場しています。また、室町時代になると日常の暮らしに枕が取り入れられるようになりました。草が原料の草枕をはじめ、「ひえ」や「そば殻」を中に詰めた「くくり枕」、木の台の上に小さな枕を付けた「箱枕」などが寝るために使われていたようです。さらに江戸時代には、男性は髷(まげ)を結うことが定着し、その一方で女性の髪型も多様な変化を遂げてきました。男女ともに寝ている時も髪の形が崩れないように、箱枕をはじめ、組み木枕などの高い枕も使われるようになりました。
そして明治時代になると、断髪令によって江戸時代とは髪型も大きく変化していきます。そのために枕も高さがあるものではなく、くくり枕が庶民の間に広まりました。江戸時代には髪の形を守るための枕が安眠のためのアイテムとして用いられるようになったのは、この頃からのようです。その後、明治から昭和にかけて現代の枕の原型である平枕が使用されるようになりました。