情報ものしり帖

安眠のパートナー。
枕のこと

10月になり、季節もすっかり秋めいてきました。暑さが和らいだ分、夏と比べると夜はぐっすり眠れるようになったという方も多いはず。昨今では睡眠の大切さが再認識されていますが、安眠に欠かせないアイテムは、何と言っても布団と枕でしょう。今回は、その中でも枕について取り上げてみました。

安眠ではなく、枕は何を守るためのものだったのか…

私たちの毎日に欠かせない枕ですが、どれぐらいの歴史があるのでしょうか?日本では、古墳時代の出土品として枕が発見されています。死者を古墳に埋葬するために、土や石、琥珀といった多様な材質を使用した枕が作られていたようです。当時、古墳に埋葬されるのは時の権力者であったため、この時代の枕は権力の象徴であったと考えられています。

時を経て万葉集の時代には、草や木、石などでできた枕が登場しています。また、室町時代になると日常の暮らしに枕が取り入れられるようになりました。草が原料の草枕をはじめ、「ひえ」や「そば殻」を中に詰めた「くくり枕」、木の台の上に小さな枕を付けた「箱枕」などが寝るために使われていたようです。さらに江戸時代には、男性は髷(まげ)を結うことが定着し、その一方で女性の髪型も多様な変化を遂げてきました。男女ともに寝ている時も髪の形が崩れないように、箱枕をはじめ、組み木枕などの高い枕も使われるようになりました。

そして明治時代になると、断髪令によって江戸時代とは髪型も大きく変化していきます。そのために枕も高さがあるものではなく、くくり枕が庶民の間に広まりました。江戸時代には髪の形を守るための枕が安眠のためのアイテムとして用いられるようになったのは、この頃からのようです。その後、明治から昭和にかけて現代の枕の原型である平枕が使用されるようになりました。

一日の約1/4は枕と接しているという事実!

平成から令和にかけて、枕は寝具の中でも非常に重要な存在になりました。今日では安眠や寝心地を重視して、枕の形状や素材に色々な工夫がなされています。枕を選ぶポイントとしては、自分の体型にあったもの、寝ている時の高さの具合、どんな素材が使われて、どのような機能があるかが挙げられます。

そうした一方で枕に特にこだわりはなく、「どんな枕でも寝られる!」という方もいらっしゃるはず。確かに、旅行中などは自分で枕を持参しない限り枕を選ぶことはできないため、枕が違っても安眠の妨げにならなければ、それに越したことはないでしょう。しかしながら、一日の約1/4は枕と接した状態で過ごしている(寝ている)と考えると、枕にはぜひこだわってほしいものです。家族のそれぞれが違った枕で寝ているのならば、自分とは違う枕の寝心地を試してみるのもよいでしょう。

自分がどんな枕を使っているかをしっかり認識していなかった方も少なくないでしょう。ぜひ今日の寝る前に、自分がどんな枕で寝ているか確認してみてください。枕にこだわれば、眠りが深くなり、きっといい夢が見られることでしょう。